日本を救う未来の農業【本の要約、レビュー】

2020/01/28

t f B! P L
ノブです。脱サラして山形でねぎとサクランボ農家やってます。
新種のサクランボ「紅王」(500円玉サイズのすごい甘いやつ)を今年植えたので、2022年には収穫できそうです。すっごく楽しみです。
さて下記の本が日本の農業の核心をついていたので、ご紹介させてください。
いきなりですが日本の農業って実は崖っぷちです。

何がそんなに恐ろしいかというと、他の国に比べて明らかに生産効率が低いんです。
技術的には1970年代で止まっていると本書では言います。

例えばオランダと日本でナスの比較をすると1ha(100m × 100m)あたり15倍の生産性の違いです。


具体的に考えてみましょう。
日本では100個しか取れないナスはオランダでは1500個取れるんです。

ここまで差が開くと意味がわからないですよね。


この本を書いた竹下正哲さんは拓殖大学で教授を務める程の合理的な思考を持った人が書いた本なのですが、かなり日本の農業の確信に触れている本で未来を合理的に見据えた論点がすごいんです。
簡単にいうと、日本のこれからの農業の未来をどうするべきかを書いた本です。


今から農業を始める人は絶対に読んでおくべき本です。
今まで農業をしていた方も読まないとこれからの農業に対応するには厳しいのではないかと思います。
日本の農業をどうしたら良いのだろうと悩む人はぜひ手にとって読んで損がない本です。


私自身が農家を経営していて強烈なインパクトを持ちました。
どの章も役に立つことなのに知らないことだらけでした。


農家のバイブルになりうる最高の本をザックリと3つに絞って解説します。
・日本の農業は後進国の理由
・学ぶべきはイスラエル!?
・AIの農業が革命を起こす。

・日本の農業は後進国の理由

日本の農業って世界最高峰だと思いますよね。
私自身が農家だったのでそう思っていました。
とはいえ、現実は違います。

なんと日本の農業は1970年代で技術が止まってしまっているんです。

ガソリンを振り撒きながら畑を耕し、農薬を世界でトップクラスで使っている国が日本です。

他の国はそんなことはもうしていないんですよ。驚きですよね。私は他の国は日本の以上に農薬漬けの野菜を作っているかと思っていました。


なら他の国はどうしているかというと、Iot、衛星写真、センサーを活用しクラウドデータを活用する農業になっています。


そうして生産性が他の国に比べて何十倍も違うんです。


繰り返しですが、ナスをとってみてもオランダと日本の比較で1haあたり15倍ですよ。
極論すぎる計算ですが、日本のナスの売上は1haあたり180万ですが、他の国真似をするだけで、1haあたり2700万ってことですよ。実際にここまでにはならないにしても少しは日本の未来に希望が見えてきたのではないででしょうか。

じゃあ今は日本がダメなのか?と言われればそうではありません。


事実、日本の野菜は味は良いと言われています。
それは日本人の職人たちの経験によって培われたものです。

これは尊敬に値しますよね。


ですが、AIによってその安心はとって変わられてしまう可能性があるんです。
AIの話は次に詳しく紹介します。

ここまで否定的なことを言っていました。絶望的な気持ちになりますよね。
ですが、日本はいつも辛いときこそ力を発揮してきました。

希望は必ずあるんです。

・学ぶべきはイスラエル!?

実は世界でトップクラスの農業をしているのはイスラエルだったんです。
イスラエルってどこって感じですけど、ココです。
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ここがどんな場所かというと太陽が熱射を年中浴びせていて、雨の量は日本で1日に降る雨の量しか降らないんです。

そんな環境で土がどうなるかというと、栄養が熱で分解されて土が土じゃないレベルです。砂漠です。

さらにもっとやばいんですが、雨がほとんど降らないんです。
東京で雪を見たら超珍しいと思うじゃないですか。そんなレベルの雨です。

だから雑草すら勝手に生えないんです。

水と土がない農業を想像してみたらただの地獄ですよ。
スクリーンショット 2020-01-28 12.04.31
さて、イスラエルの人たちはそんな中にどうにか農業をしようと知恵を絞ってしまいとうとう日本人以上の農業方法を作り出しました。


どうやっているかというと、ドリップ灌漑というものです。


なんだそれ?って感じですよね。
日本でこれをやっているところは少ないので知らなくて当然です。

これがどう言ったものかというと、チューブに水を流してちっちゃな穴を開けて水を流すというものです。


実際にはこんな感じです。
スクリーンショット 2020-01-28 12.03.29
なんか難しそうに見えますが、やっている事としてはホームセンターに売っているコレです。
これは、ちょっとずつ水をあげるものです。
よく家庭菜園で見ますよね。


なぜこれが良いのかというと、ちょっと植物の気持ちになってみましょう。


水が飲みたい時って一気に飲めと言われても嫌ですよね。
飲むのであれば、ちょっとづつ適度に飲みたいですよね。


植物の成長するにはちょっとづつ水を与えるのが適切なんです


だから、ドリップ灌漑ではこれと同じことを大規模にできるので生産効率が高いんです。

日本では天候に恵まれているので、雨に任せてもある程度の生産性があるからこんな技術は作る必要がなかったので、ドリップ灌漑で生産力が追い越されてしまいました。
実は、さらにこのドリップ灌漑が素晴らしいかというと近い将来にAIが関わってくるからです。


ここからが私が大きく感銘を受けた最高のポイントです。

・AIの農業が革命を起こす。

さて、AIについてはもう皆さんがほとんど知っていると思いますが軽くおさらいです。

これからのAIで何が変わるかというと、未来の推論ができます。ちょっと意味がわからないですよね。

例えば、近い将来Amazonで物を買うとまるで知っていたように5分程度で届きます。
なんでこれができるのかというと、統計的(経験)に起こりうる未来を予測できるからです。

どうやっているかというと
自動水やり装置を買った人が3日後までに液体肥料という商品を買う確率は90%だと統計が分かったとしたら、その人の家の近くの倉庫に在庫を用意しておくんです。

そうするとすぐに配達でき、倉庫の空きスペースがほとんど必要なくなります。

ちょっと込み入った話ですが、そうした方が在庫費用のコストが抑えられるとしたら利益が上がりますよね。


500個の倉庫、50個の倉庫、1つ借りる費用が月3万円だとしてどちらが良いでしょうか?

1500万と150万の違いで1350万円の違いです。
A,(月150万円 + AI初期費用1000万)
B,(月1500万円)

Aは最初の月は1150万円でその後は150万しかかかりません。
年間では2950万です。来年からは年間1800万円です。

Bは毎月1500万円かかります。
年間では1億8000万です。来年は1億8000万、来年も1億8000万です。

かなりシンプルな計算で穴だらけですが、本質的に安くできるとしてどちらをやるでしょうか?※さらに知能はコピーできるのでAI技術を売り放題です。

IT社長「儲かるからやる。当たり前の話。」


AIの開発の費用が長期的に今やっていることより下回った時にAI革命が起きます。


つまり、AIが未来の推論で今より利益が上がるから主流になるんです。

超ざっくりですが、これがAIの力です。


AIは農業でも有効なんです。
例えば、ドリップ灌漑では例えば次のような2つのことができます。

・水をやる時の調整
・肥料をやる時の調整


さて、実際にどうやって活用するかというとAIを使わないでドリップ灌漑をするとなればこうなります。

AI無しの場合
人間「調整が難しいから、育てている間は水を出しっぱなしにしよう。」

「朝も夜も夕方も雨の日も晴れの日も、暑い日も寒い日も全部同じ量を与えよう。」

「液体肥料の調整もなんとなく勘でやろう。」

「収穫前に肥料を与えないと野菜が甘くなるから、なんとなくその時は少なくしよう。多分経験的にいけると思う。」

AIありの場合
AI「5年間と隣の畑とこの畑で水の量を分けて比較実験したデータによれば、朝は水を少なく、昼は多めに、夜は少なくすることがいいとわかりました。さらに気温が30度の場合と35度の場合で水の量を比較した場合は、最適な水の量がわかりました。野菜の糖度センサで測定した結果、最も甘くなる肥料の与え方は35度の場合はこの量で、30度の場合はこの量です。与える期間が最適なのは収穫から14日前です。収穫する日から逆算して成長させて最適な出荷時期にできるように成長させます。これから想定できる10日にはおそらく100トンの野菜が出荷できます。 めんどくさいですか?大丈夫です。これは私が全てやります。

私「オッケーぐ〜ぐる。あとやっといて。」

これでオッケーなんです。

これを様々なセンサーを導入することで未来の予測精度を高めることができます。

例えば、甘さのセンサーをサクランボにさしておけば、甘くなる方法がわかります。

日光の量を測るセンサーがあれば、日光の条件でも良い方法が分かります。

土のphセンサー、雨量、気温、画像識別、もっと色々ありますね。


人間はこれらの条件を長年の勘で職人として判断してやってきました。

とはいえ、無理がありますよね。

日本は高齢化です。いずれどの国もそうなります。
勘が鋭い職人の高齢者が引退しています。
その方法すら消滅していっています。

若者は農業という照りつけて腰を曲げる重いものを持つ仕事をやりたがりません。


だからドリップ灌漑が長期的に見てAIが利用しやすいんです。

じゃあ、実際に日本でやって成果でたのか?ということですが
ドリップ灌漑を日本で実際に実施してみたところ成功し、なんと3倍も生産量が上がるようです。

ではなぜやらないのか?
→よくわかんない。難しいじゃん。新しいことは嫌。

嘘みたいな話ですが、これが本当に起きています。
私の好きな分野の心理学ですが、現状維持バイアスがかかっているのでやらないんです。
現状維持バイアスとは?
新しいことはやりたくても、できない人間の心理
最初に言いましたが、味はどうなるのか?ということですが、AIは一度できたら何度も再現できてしまうからすごいんです。

今はまだ美味しさは日本人の勝ちです。

ですが将棋、音楽、芸術で人間を追い越したA Iがおいしい野菜を絶対に作れないと思うのは、少し悲観的すぎる考えに思えます。

AIができるように人間が知恵を絞るので、できると私は予想します。

じゃあ、どうやってやるか?と農家の私なりに個人的に今年試してみます。
その様子をnoteで語れればいいなぁと考えています。


実際にAmazonで簡単にできるのがないかなぁと探してみるとすごくいいのがいっぱいあってかなり驚きました。

例えば、ホースって普通ホームセンターで10mくらいで1500円とかするじゃないですか。結構高いんですよ。

Amazonだと25mのホースと、ドリップ灌漑の装置と、水の時間を決める簡単操作のタイマーを含めて1500円くらいで買えるっぽいです。
(ホームセンター潰れるんじゃないか?)

いくつか比較してみたんですが、3つほどドリップ灌漑を試すにはいいのがありました。
条件としては2つです。

・水をやる時間を決めるための装置のタイマーがあること。
・価格が安いこと。

どれが試すのに最適か比較してみました。
3つ良さそうのがありました。
これが一番価格が高いです。
メリットは多くのタイプを出していて拡張する時に同じメーカーなのでしやすそうってところです。レビュー数から見るなら信頼できそうです。
予想ですが他のものと部品は同じ所から調達してそうです。
水を噴出する場所(オレンジ色の部品)も構造的に大きな差はなさそうでした。
タイマーはデジタル表示で少しシンプルさに欠けるかもです。

メリット 拡張しやすそう。信頼性が高い
デメリット 価格が高い。


このタイマーが一番シンプルで使いやすそうでした。
左のつまみが時間の間隔で、右のつまみが水を出す時間です。

左が1時間、右が1分なら 1時間おきに1分間水を流すよってことです。
最短の左が1時間で、右の最短が1分のようです。

理想は左をもう少し間隔を短く設定できて、1日での設定ができたら最適ですね。

メリット タイマーがシンプル
デメリット 時間設定が微妙

これが最適かと思います。

画像をアップして見た所1番目に紹介したシステムと一緒みたいに見えます。
タイマーも一緒に見えるので、明らかにこっちがお得ですね。

おそらく、無名のブランド(信頼がない製品)が有名ブランド(信頼がある製品)に価格競争を仕掛けているから安いんだろうと思います。

私が買うならこれを買います。格安ですからね。

メリット 一番安い
デメリット 信頼性が低い


タイマーの詳細がなかったのですが、タイマーがデジタルで似ているものがありました。
これはソーラーパネル付きで電池を必要とせず、水やりのパターンを詳細に決めることができるのでドリップ灌漑としては最適そうです。

場合によっては農家が作るより美味しいトマトが作れる可能性だってあります。
そして自分で作った野菜って心理的に美味しいですからね。
ホースを切ったりして自作をするのでDIYとしても楽しめそうで2倍お得ですね。
さて、話を戻すとドリップ灌漑とAIが日本を救うと私は思います。
今から始めると一歩先に出た人になれると思います。
本書は濃密すぎて今回では語れなかったデータから分析した有益な情報がたっぷり詰まっています。農業で成功したい人は読んでみることを強くお勧めします。私のお気に入りの一冊です。


PS.感銘を受けたので、今後は地道にドリップ灌漑を実際にやって記事にしていきます。
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